249ドルから。X-Plusが7インチUMPC「Piccolo Series71」を発売

最近のUMPC(ウルトラモバイルPC)市場は、高性能なAPUを搭載したゲーミング用途のモデルが非常に元気な印象ですが、ここにきて少し毛色の違う製品が登場したようです。

X-Plusというメーカーから、Intel N100を搭載した7インチのUMPC「Piccolo Series71」が発表されました。価格は249ドルからと、昨今のゲーミングUMPCと比較するとかなり安価な設定になっていますね。

外観としては、GPD Pocketシリーズなどと同じような、クラムシェル型のオーソドックスなスタイルと言えるでしょうか。キーボードの両脇にポインティングデバイスとクリックボタンが配置されているあたりは、過去に人気を博したUMPCのフォーマットを踏襲しているように見えます。こういった小型のキーボードデバイスは、文章作成などを主目的とするユーザーにとっては根強い人気があるのかもしれませんね。

最近の高性能機とは少し違う、割り切ったコンセプトのようにも見えますが、まずはその中身を詳しく見ていくことにしましょう。

本製品のHDMI端子について、『フルサイズHDMI』と記載しておりましたが、正しくは『ミニHDMI』でした。申し訳ありません。ご指摘いただき、ありがとうございます。完全にこちらの確認ミスです。申し訳ありませんでした。

先日公開しました〇〇(製品名)の紹介記

「Piccolo Series71」の基本スペックとハードウェア

それでは、発表されている「Piccolo Series71」の基本的なスペックを確認してみましょう。

  • CPU: Intel Processor N100
  • メモリ: 16GB LPDDR5
  • ストレージ: 512GB / 1TB NVMe SSD
  • ディスプレイ: 7インチ IPS液晶 (解像度: 1280×800)
  • ポート類:
    • USB 3.0 Type-A ×2
    • ミニHDMI
    • 3.5mmイヤホンジャック
    • MicroSDカードスロット
    • DC電源ポート
  • OS: Windows 11
  • 価格: 249ドル〜

CPUにはIntel N100が採用されていますね。このCPUは、第12世代Alder Lake-Nアーキテクチャのプロセッサーで、主に低価格帯のミニPCやノートPCで採用例が多いものです。特徴としては、消費電力が非常に低いことが挙げられます。性能面では、Webブラウジングや動画視聴、あるいはMicrosoft Officeなどを使った書類作成といった、日常的な作業であれば問題なくこなせるレベルでしょう。

メモリが16GB搭載されているのは、現代的な使い方を考えると安心できるポイントだと思います。ストレージもNVMe接続のSSDということで、OSやアプリケーションの起動でストレスを感じる場面は少ないかもしれません。

ただ、やはりグラフィック性能については過度な期待はできません。CPU内蔵のIntel UHD Graphicsですので、3Dを多用するゲームや、本格的な動画編集といった高いグラフィック性能を要求される作業には向いていないでしょうね。あくまでも事務作業や情報収集を主目的とした構成、と考えるのが妥当かなと思います。

ポート類が比較的豊富なのは良い点ですね。USB Type-Aが2つあるので、マウスやUSBメモリなどを変換アダプターなしで接続できます。HDMIがミニなので、あまり見かけない端子なのはちょっとつらみですね。

注意点:USB Type-C非搭載とDCジャック充電について

スペックを一通り確認してきましたが、ハードウェアの仕様で少し気になる点もありますね。それは、USB Type-Cポートが搭載されていないことです。

最近のスマートフォンやタブレット、ノートPCの多くはUSB Type-Cポートを搭載しており、PD(Power Delivery)充電に対応しています。これにより、一つの充電器とケーブルで様々なデバイスを充電できるため、持ち物を減らせるという大きなメリットがあります。

しかし、この「Piccolo Series71」は充電が専用のDCジャックのみとなっています。これは、モバイル用途を前提としたPCとしては、少し不便に感じてしまう点かもしれません。外出先でバッテリーが切れた際に、友人やカフェで充電器を借りるといったことが難しくなりますし、常に専用のACアダプターを持ち歩く必要が出てきます。

もちろん、USB Type-Aポートに何らかの変換アダプターを使えば映像出力なども可能かもしれませんが、充電という最も基本的な機能が専用端子である点は、購入前にしっかり認識しておくべきポイントでしょう。

このあたりは、やはり249ドルからという低価格を実現するための割り切り、コスト調整の結果なのかもしれませんね。利便性を取るか、価格の安さを取るか、ユーザーの価値観が問われる部分だと思います。

総評:本来のUMPC入門機としての価値と可能性

さて、ここまで「Piccolo Series71」について見てきました。

全体を総括すると、このPCは昨今の高性能な「ゲーミングUMPC」とは全く異なる思想で作られた製品だと言えるでしょう。

ゲーム性能を追求するのではなく、「どこにでも持ち運べるコンパクトなWindowsマシン」という、かつてのUMPCが持っていた本来の役割に立ち返ったようなモデル、という印象です。

では、このPCはどういった人に向いているのでしょうか。 例えば、外出先で物理キーボードを使って長文のテキスト入力をしたい人で、その環境を安価に手に入れたい、といった場合に適しているでしょう。また、メインPCは別に所有しており、あくまで情報収集や簡単な作業を行うための、とにかく安価なサブUMPCを探している、というようなユーザーにも良い選択肢となるかもしれません。

結論として、「Piccolo Series71」は「用途を限定すれば、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢」と言えるのではないでしょうか。すべての作業をこれ1台でこなそうと考えるのではなく、文章作成やWebブラウジングといった特定の目的に特化して使うことで、その真価が発揮されるPCだと思います。

UMPCというジャンルに興味はあるけれど、高価なゲーミングモデルには手が出せない、と感じていた人にとっては、面白い入門機になる可能性を秘めている一台ですね。